コーヒーと緑茶は、ポリフェノールなどの抗酸化物質を含むことから、がんを予防するのではないかと考えられています。しかしながら、肝臓がんとの関連については疫学的エビデンスが必ずしも十分ではありません。コーヒーについては、コホート研究や症例対照研究、メタアナリシスなどから、以前より、肝臓がんを予防する可能性ありと言われてきましたが、これまでのほとんどの研究は、肝炎ウイルス感染状況を考慮したものではありませんでした。また、緑茶との関連については、研究がほとんどなく、肝臓がんへの影響についてはわかっていません。
コーヒーと肝臓がんの関係では、コーヒーを「ほとんど飲まない」人と比べると、「ほとんど毎日飲む」人では肝臓がんの発生率が約2分の1に、「1日5杯以上飲む」人では約4分の1に低下していました。1日に飲むコーヒーの量が増えるほど肝臓がんの発生率は低下し、男女ともに同様の傾向がみられました。
一方、コーヒーと子宮体がんの関係では、コーヒーを「ほとんど飲まない」人に比べ、「毎日1~2杯飲む」人では約4割、「毎日3杯以上飲む」人では約6割、子宮体がんの発生リスクが低下していました。
「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」において、多目的コホート研究を含めた国内の複数の研究結果に基づき、コーヒーの肝臓がんの発生リスクを下げる効果は「ほぼ確実」、子宮体がんの発生リスクを下げる効果は「可能性あり」と判定されています。
これらの結果は、肝臓がん最大のリスク要因である肝炎ウイルス感染の有無で分けても、いずれも同様の傾向がみられました。
考えられる原因
コーヒーは、肝機能酵素活性を改善したり、肝臓がんの前病変である肝疾患や肝硬変のリスクを低下させたりすることが知られており、肝細胞炎症を軽減することによって肝病変の悪化を抑制し、肝臓がんの予防につながると考えられます。
コーヒーに含まれる成分でクロロゲン酸、カフェインなどが、肝臓がん予防に関わっていると考えられています。
一方、緑茶の肝臓がんにおける役割はよくわかっていません。緑茶は少なくともリスク低下の方向には働いていないようでした。緑茶はビタミンCを含んでいるが、ビタミンCは、抗酸化物質としての役割を持つのみでなく、鉄吸収を高めることが知られています。鉄過剰は、肝線維化を促進することが知られていますので、緑茶と肝がんに関連が見られなかったのは、ビタミンCの発がん予防作用と鉄を介した作用が共存していたためかもしれません。