中高年になってから運動をはじめても十分な効果が期待できます。
ウォーキングなどの運動は、間違いなくすべての人にとって良いことだ。運動を習慣化することで、肥満、2型糖尿病、心血管疾患、脳卒中、がんなどのリスクを減少でき、健康寿命を延ばせることが多くの研究で示されている。
しかし、それまで運動をする習慣のなかった人は、とくに年齢を重ねた人は、「運動の恩恵を受けるのは、もう遅すぎるのではないか」と思うかもしれない。
しかし心配はご無用だ。新しい研究で、中高年になってから運動を始めても、早死のリスクを減らし、寿命を延ばす十分な効果な効果を得られることが明らかになった。
運動や身体活動と死亡リスクとの関連性についてはすでに多くの研究が報告されているが、運動レベルを経時的に調べ、その効果がどのように変動するかを調べた研究は少ない。
そこで英国の大学などは、40~79歳の男女1万4,599人が参加した研究の成果から、時間の経過による運動レベルの変化が、心血管疾患などによる死亡リスクにどう影響するかを調査した。
研究チームは参加者を、12.5年(中央値)にわたり追跡した。年齢、身長、体重、血圧、血糖、コレストロールなどの検査を定期的に行い、食事、アルコール摂取量、喫煙などの生活スタイルについて尋ね、心拍数をモニタリングすることで身体活動についても計測をしました。
その結果、「身体活動エネルギー消費量(PAEE)」を増やすと、死亡リスクを減少できることが明らかになりました。具体的には、身体活動量を1年間に体重1kgあたり239kcal(1キロジュール)増加すると、あらゆる原因による早死リスクを24%減少できることが分かりました。
体重60kgの人が活発なウォーキングを13分、毎日行うと、この身体活動量を満たすことができる。これにより、心血管リスクを29%、がんのリスクを11%、それぞれ減少できるそう。
1日10分のウォーキングで良いので、とにかく始めることが大切
WHO(世界保健機関)の運動ガイドラインでは、成人に1週間に150分以上のウォーキングなどの中強度の運動、あるいは75分な活発な運動を行うことを推奨している。
まったく運動する習慣のない人が、5年間をかけて少しずつ運動量を増やしていって、運動ガイドラインの求める水準に達するようになると、この239kcal/kg/日というエネルギー消費量の水準をほぼ満たすことになると言います。
「過去の活動レベルに関係なく、時間の経過とともに活動レベルを上げた人は、まったく運動をしない人に比べ、5年間で死亡リスクを大きく減少できることが分かりました」と、大学教授は言う。
「運動をする習慣のない運動不足の人でも、1日10分のウォーキングで良いので、とにかく運動を始めることが大切です。すでに運動習慣のある人には、より活発に体を動かすことが勧められます」と、強調する。
「運動を推奨することは、とくに心血管疾患や2型糖尿病、がんなどのリスクを抱える現役の中高年の成人にとって重要なことです。中年期から高齢期にかけて身体活動レベルの減少を防ぐことが、公衆衛生上の取組みとして必要」と指摘しています。